4月17日(土)午後オンラインで、「地震と防災」についてのセミナーが行われた。

はじめに田島文子氏から地震研究の歴史および地震の基礎について講演があり、その後ひまわり会会長の河野サキ子氏、役員の河合順子氏から「地震への備え」について災害を最小限にとどめるための準備と心得などについてのプレゼンテーションが行われた。

「地震の科学と半世紀」
田島文子氏は、東京大学で博士号を取得後、UCLA, CALTEC, U Texas, UCバークレー校その他で地震研究に従事、広島大学教授を経て現在もUC Irvineで教鞭をとる。その豊富な見識と資料をもとに、20世紀前半にはまだ原因が究められていなかった地震現象の理解が、キャリアと重なるこの半世紀の間にどのように深まってきたかなどを振り返り、主だった地震を例に非常にわかりやすく説明していただいた。またその理解に基づいて地震災害にどのように備えることが重要かについても言及された。

1968年ごろに確立したプレートテクトニクスは、地震や火山・造山運動など地球上の地質現象を包括的に説明できる理論で、この理論の枠組みで地震に関する研究も飛躍的に進歩した。地球の表面はプレートという大小様々の拡がりをもった厚さ100kmほどの硬い岩盤で覆われていて、個々のプレートはその下のマントルで起こっている 対流に引きずられて動き、他のプレートとは相対運動をしている。地震はその相対運動によりプレート境界にたまったストレスを解放する現象である。相対運動のスピードは、1年間に数cmから10cm程度、爪が伸びる程度のゆっくりした動きであるが、何十年、何百年の間に溜ったストレスは、大地震として解放される。

今から約2億数千年前、パンゲアと名付けられた超大陸があり、それがいくつかのプレートに別れて移動した結果、現在我々が住んでいる地球上の6大陸の分布となったと考えられている。一方海洋底では、マントル深部から上昇してきた熱い柔らかいマグマが海嶺で表面に出て冷え、新しい硬いプレートが生まれる。その後プレートは海嶺から離れる2方向に地表をゆっくり移動し、古くなって冷えたプレートは海溝でマントルに戻っていく。

個々のプレートの相対運動は大きく分けて3種類あり、それに伴って境界も区分される。海嶺付近のように2つのプレートが反対方向に移動する境界は張力が卓越する発散境界、向き合ったプレート同士が接近し圧縮力が卓越する境界は収束境界、もう1つは向き合ったプレートが反対方向に水平にずれる横ずれ境界があるが、個々の境界で働く力はこれらの区分よりは複雑であり、同じ断層(震源域)でも地震の起こり方は時と場合によって異なる。カリフォルニア州のサンアンドレアス断層は太平洋プレートと北アメリカプレートとの境界で典型的な横ずれ境界にあり、1906年にマグニチュード(Mw)7.9の地震がサンフランシスコ近辺に壊滅的な被害をもたらしたが、1989年に同じ断層の一部が破壊して起こったロマプリータ地震はMw6.9に止まった。収束境界では多くの場合片側のプレートがもう一方のプレートの下に沈み込む海溝となり、日本海溝のように大地震が頻発する。2011年にMw9.1の地震が起る以前は、この沈み込み帯での大地震はMw7〜8クラスと思われていた。

地震がいつ、どこで、どのくらいの規模で起こるかは予知できないが、過去に大きな地震があった地域では再度起こる可能性は高い。地震の被害は、多くの場合強震による建物の倒壊、家具・落下物等の下敷き・投打、あるいは津波などによって起こり、被害の大きさは地震の規模に比例しない。例えば、1995年の阪神淡路大震災(Mw 6.9)では6,500人近い方が亡くなったが、その多くは倒壊した建物の下敷きなどが原因であった。その後日本では、建築基準法が改定され新旧の建物に耐震対策が強化され、全国に高精度高密度のリアルタイム地震観測網が設置された。2011年の東日本大震災(Mw9.1)では、建物の倒壊は大きく減少し、震源の近くで地震が検知された後数秒以内に離れた地域に警報が届き、東京などでは揺れが到達する前に電車や新幹線が停止して大きな被害を免れた。被害を最小限にするには事前の備えが大きな鍵で、個人においても、住居の耐震強度を強め、家具等の転倒防止など地震対策を行うことが重要である。

まとめ:私たちが地震の被害を最小限にとどめるために心がけること。
1, 地震発生のメカニズムと被害がどのように起こるかを理解する。
2, 住んでいる建物が最新の耐震基準にそって建てられているか、あるいは耐震補強がされているかを確認する。
3. 自分の状況に合った安全確保のマニュアルを平時に用意し、落ち着いて行動する。

参加された方からは、「豊富な資料に基づき、多面的に地震を研究された講師のお話はとても貴重で面白く、ためになった」、「知らない知識を多く学び、津波のメカニズムがよくわかった」、「具体的なアドバイス、持ち物リストなどもカバーされて参考になった」など、多くの感謝の声が寄せられた。

地震への備え」と「持ち出し品リスト」を参考にしてください。

(レポート 大下啓二)