「旅に出る:千ピースのジグゾーパズル(上)」
梁(りおんぐ)裕子

父は、油にまみれ、工具の鉄の匂いの工場(こうば)にいる人で、あれこれ、発明まがいの企画に頭を突っ込んでいました。多分、私が、中学生くらいの時でしょうか、“新しく入社してきた若者が背広で仕事に来て、工場(こうば)服に変えて仕事をして、背広に着かえて帰るんだ。“とふと、悲しげに呟きました。機械屋さんの父は、手を汚さない仕事を求め、彼のような仕事の面白さに気が付く機会も持たない若者たちを残念に思ったのでしょうね。

2月末より、ヨーロッパに2週間余、一人旅に行ってきた報告が、何故、父の話から始まるのでしょうね?お許しください。でも、彼の憂いは私の憂い:何故、手を使う仕事が疎んじられる風潮があるのか? というのが私の疑問、それをここ2、3年、千ピースのジグゾーパズルと名付けています。そういうわけで、彼の話から、この小文は始まります。

それでは、前書きが長くなりましたが、ヨーロッパ旅行の話、順序立ててお知らせいたしましょう。昨年の夏、来日した時、尊敬する看護の友人、金井一薫氏にお会いしました。彼女は長い間ナイチンゲールの研究をされ、臨床の実践に応用できるようチャートシステムの開発・普及に取り組んでいらしゃいます。ロンドンでの看護・助産師国際会議(2016年3月12・13日)に参加・発表する予定にしているとお聞きしました。帰国してから、しばらく考え、この旅からパズルの答えが明確になるように思いはじめ、応援(?)で行ってみようかなと旅行の計画を立て始めました。

ロンドンでの会議を最終目的地にして、概略を立て始めましたが、主人は、”おいしい食べ物”のない国は興味なし。一人旅と相成りましたが、まずは、英国に行くならばオランダに行って北海を船で渡ろう。ゴッホに焦点を絞り美術館を訪ねよう等々、アイディアが沸いてまいりました。AIRB&B をご存知でしょうか?もしご存じでないようでしたら、是非、次の旅行を計画されるときお試しください。主人が発見して、近年の旅は、殆ど、AIRB&Bを利用しています。当たりはずれもあったりしますが、それも、旅の楽しみ。そして、リック・ステイーブ https://www.ricksteves.com/ をご存知でしょうか? 私の目覚ましは朝6時。クラッシックラジオ番組 http://www.kdfc.com/ 日曜もそのままで、彼の番組を知り、何年も楽しく聞いています。ヨーロッパが中心ですが、とっても面白い旅のインタビュー番組です。寝たまま、バックパックで旅行に出る楽しみが味わえます。そして、彼のガイド・ブックは丁寧で、一人旅にはうってつけ。

10月には、休暇の許可をもらい、滞在先、飛行機が決まりました。ところが、11月に入ってすぐ、左足首を骨折してしまい松葉杖のお世話に6週間。感謝なことに、運転ができましたので、仕事には行くことができましたが、身動きが規制され、まさに身体が訛っていくのを実感させられました。そして、外に出るのが”恐ろしく”なるのには全く参りました。こんな風に、どんどん元気がなくなるんでしょうね。そんなわけで、キャンセルしようかと迷いもしましたが、無事、行ってきましたバックパック一人旅!中身が抜けて、全然、旅行記になっていませんが、まずは一報。   (次号に続く)