花かご便り 2020年秋季号
2020年7月〜9月
俳句•詩
ジャスミンに 思わず外す マスクかな
雷雨明け 赤茶の空に 虹の橋 (土屋 和子)
川開き コロナ吹き飛べ ドドドンと
炎天下 暑さにめげぬ ひまわりや (ツル― 玲子)
七十の 手習いズームで フラダンス
ひとひらの 影かなしみの 白き薔薇 (星 きみえ)
もう嫌だあーあー
翼が欲しい
果てしない 澄み切った 青空に向かい 飛び立とう
日々のモヤモヤ 吹き飛ばそう
あーあああーーそうそう
めがねと GPS 忘れずに (ベアード エミ)
エッセイ
「コンポスト」 春海真理子
ステイホームオーダーが出て、家にいる時間が極端に増え た。「こういう時こそ庭仕事を」と決意して意気揚々庭に出て みると、土が乾燥してまるで生気がない。冬の間は雨が降る ので、土は黒々と、いかにも豊潤な感じなのだが、乾季が始 まると嘘のように枯れあがってしまう。砂漠のようなカリフォ ルニアの夏は、少々の水を撒いても表面をぬらして流れてい くだけで、ちょっと掘ってみると、下の方の土は乾ききってい る。まさに焼石に水だ。しかも、このあたりの土は粘土質なの で、放っておくと、まるでセメントのようにカチカチに固まって しまう。しかし、水不足の中、ふんだんに水を撒くわけにはい かない。この土事情を解決するには常にコンポストを混ぜて 、土質をよくしていくしかない。 コンポストは買うこともできるが、生ごみや落ち葉と土を混 ぜ、熟成させ堆肥化することで、自宅でも作れる。私も、以前 ワークショップに参加し、コンポ―スターと言われる一抱え もある大きな容器を買い、説明書に従って、コンポスト作り をしたことがある。しかし、コンポ―スターの中の微生物の 働きを活性化させるためには、通気をよくする必要があり、 そのためには、ショベルでしょっちゅう中身を上下ひっくり 返さなければならない。これが結構、大変な力仕事だった。 さぼっていると、そのうち、虫がわいたり、ハエが発生したり、 夜中に小動物が餌をあさったりした。こんなに手間がかか るなら、いっそ、郡のコンポスト用のゴミ箱に入れて、毎週回 収してもらった方が理にかなっていると思うようになった。そ うして、いつのまにか、自家式コンポストはやめてしまった。 せっかく買ったコンポ―スターは、家の前にFreeと書いて 置いたら、あっという間になくなった。きっと今頃、どこかで、 誰かが、私と同じような苦労をしているに違いない。 そういう苦い体験があったので、今回は、コンポ―スターは 使わず、庭に穴を掘り、そこに台所の生ゴミを直接入れ、上 から荒土をかけておくことにした。台所のシンクの側に1ガ ロンくらいのプラスチック容器を置いておき、肉や魚以外の 生ごみはすべてここに入れ、容器が一杯になったら、庭にも っていき、土に埋める。夫婦二人暮らしでも、生ごみは結構 な量になる。この半年近く外食をしていないせいもあるが、 週に容器に2杯、約2ガロンの生ごみが出る。過去6か月の ステイホームオーダー期間中、ざっと50 ガロン近くの生ご みを出したことになる。大変な量である。それが我が家の小 さな裏庭で土に混じり、跡形もなく消え失せている。夏の間 、生ごみは結構な速さで分解するようで、数週間後に埋めた 後を掘り返してみても、ほとんど原型をとどめていない。そし て、驚くことに、あれほどカチカチだった無機質のゴロ土が、 いつのまにか湿り気を帯び、ふわふわ、ほくほくになっている 。今のところ、変な虫やハエも発生していないし、動物に荒ら された様子もない。このシンプル極まりないコンポストは案 外成功したのかもしれない。この秋には生ごみから生まれ 変わったこの土に、野菜や花の種をまいたり、苗を植えるの を楽しみにしている。来年の春に、それらがどう育ち、どう花 開くか、見届けるのも楽しみだ。 ワクワクしながら、私は今日もせっせと生ごみを庭に埋めて いる。