毎月、第三日曜日は朝からお天気が気になる。この日は「ひまわり会」による日本語の古本市があるからだ。朝10時頃にはエルセリートの日本食料品店「八百屋さん」と隣の小物雑貨店「ジパング」の入り口付近に、店の奥の収納庫から運び出された段ボールの本箱が所狭しと積み上げられる。その箱の中から本を出して棚に並べたり、整理をするのが私のボランティアの仕事だ。

この古本市は30年ほど前に始まったが、初めのうちは少なかった本の数も今ではざっと数千冊にはなっている。日本の小さな本屋よりよほど在庫数は多い。古本とはいえ、中には読み終えたばかりのピカピカの新刊もあり、最近のベストセラーから直木賞や芥川賞の作品まで見つかることもある。また、自費出版、趣味の本、週刊誌、子供の絵本や漫画など、ありとあらゆる種類の本がここには集まっている。料金は一冊一ドルで、5冊以上買えば、あと5冊は無料でもらえるという破格値。海外に住む日本人ならずとも、とびつきたくなるような値段だ。この破格値を可能にしているのは、古本がすべて寄付によることと、ここの運営のほとんどすべてがボランティアでまかなわれていることによる。又、本の収納場所を無料で提供してくれている「八百屋さん」や「ジパング」の協力のお陰でもある。渡米者の文化的生活の向上を支援する

非営利団体である「ひまわり会」ならばこそ可能な、この料金、

この内容での日本語古本市なのだ。

 

海外に住む日本人にとって、日本語の本は貴重品だ。公共図書館

にある日本語の本は数少ないし、日本町のK書店で売られている日本からの輸入の本
は高価で、そう簡単には手がでない。かと言って、スーツケースに詰めて日本から持ってくるには本

はかさばって重たい。私も、ひと昔前までは日本に帰るたびに、アメリカに持って帰る本を選ぶのに、

頭を悩ましたものだ。それが今やこんなにたくさんの日本語の本にふれ、気軽に手に入れることができる。なんて有難いことだろう。

「ひまわり会」の古本市は本を求めるだけの場所ではない。ここにいると、久しぶりに知人と出会ってあいさつをしている人、世間話をしている人、相談事をしている人たちなどであちらこちらから日本語が聞こえてくる。ここは人と人が出会う場所にもなっているのだ。また、ボランティアたちにとってのコミュニティでもある。いつ頃からか、仕事が一段落した頃に、古本市の片隅で持ち寄りの昼ごはんを食べるのが習慣となった。毎回、皆の為にたくさんのおにぎりを作ってくるAさん、漬物の名手のJさん、手作りの赤紫蘇ジュースが好評のMちゃん, 最近は本を買いにくるお客さんからの差し入れまであり、皆でわいわい食べるこの昼ごはんはボランティアたちの楽しみのひとつになっている。