ひまわり会 2007年度秋のワークショップ

「ナースの私から見たナーシングホームの泣き笑い」

できるだけナーシングホームに入所しないようにするには、どうしたらいいか?
自分でできる健康づくり、家族や友人同士でできるヒーリングは?

−アメリカ医療システムの最末端にあるためのひずみ
−ボランテイアによって支えられている入所者の楽しみの時間
−プロフェッショナルによるボデイワーク&エネルギーワーク等

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スピーカー:日野洋子RN
プロフィール:愛媛県松山市出身。
愛媛大学法文学部文学科および聖路加看護大学卒。
子供病院、短大助手を経て96年に渡米。
UCSF看護学部にて修士課程修了。
99年から通算7年半、San Francisco Convalescent Hospital(ナーシングホーム)で勤務。
昨年は鍼灸学校で医療気功と、エサレン研究所でマッサージを履修。

 

1.ナーシングホームとは

主 として老人の長期療養施設。脳血管疾患、癌、骨折などの治療を総合病院でうけて比較的状態が安定してから転送されてきたり、総合病院に保険の関係で入院継 続が困難になった場合、あるいは家庭やアシステッドリビングで療養していて、ケアがさらに必要になったとき利用される。
Medicareでは、総合病院で治療をうけたあと、約100日間ナーシングホームでの療養がカバーされる。それ以後の費用は自費。1か月で6000-7000ドル必要。資産が尽きると、Medicalの申請をする。

環境:2人か3人部屋。部屋代を2倍支払うと2人部屋を個室に使える。部屋はせまく、カーテンがあるだけで、プライバシーはほとんどない。

レジデント(入所している人):主として60歳以上。身体的、精神的にさまざまな状況にある人びとが混然と生活している。

軽症の例: 軽度の認知症があり、歩行器を使って自分でゆっくり歩き、食事は自分で食べられる。自室のトイレにいくときは看護助手が手伝う。それでも、失禁があるので、紙おむつ着用。

重症の例: 脳血管疾患の後遺症で、半身麻痺。飲み込む力が低下しているため、胃チューブからの栄養と、「生活の質」を高めるため、昼ごはんだけ、ピュレー(裏ごしした)の食事。ベッドからリクライニングチェアには、専用の機械を使用して体をつりあげて移す。

コ ンフォートケアの例:状態が悪化して死が避けられなくなったとき、これ以上積極的な治療をしないで安楽に最後の時間をおくれるようにすることを家族が医師 と相談の上で決断した場合、モルヒネを医師の処方どおりに投与しながら、最後の看取りをする。酸素吸入も、必要時処方される。

精神科的症状の例: 精神病の症状を伴う認知症、うつ病、そううつ病など。精神症状が悪化すると、同室者に危害を加える可能性がある。「自傷他害」の行動がでると、精神科の急性期病院に移送して、集中的な治療が必要になる。

アルツハイマー症で、徘徊が顕著な場合、基本的に鍵のかかる専門病棟が必要。
鍵のかからない施設では、逃亡の可能性のあるレジデントには、アラームに反応するリストバンド着用。

スタッフ:常駐スタッフは、看護部(看護部長、副看護部長、RN, LVN, 看護助手)、栄養士、キッチンスタッフ、アクテイビテイスタッフ、ハウスキーパー、
外部からの通いスタッフは、医師、PT、OT, ST, 歯科医、足治療医、牧師など。

看護スタッフは、ほとんどがアジアからの移民。フィリピン系が約7割、残りは中国系。ネイテイブスピーカーは、アフリカンアメリカン若干名のみ。

ボランテイア:午前10時と午後2時のアクテイビテイのプログラムに合わせて、手伝いや、音楽の演奏、アート教室、教会の集まりなど。そのほか、個人を定期的に訪問。

家族:面会時間は、午前10時から午後6時まで。家族の事情によって、枠外の訪問もできる。一日2回の面会をレジデントがなくなるまで数年続けた家族もある。

 

2.アメリカ医療の最末端にあるナーシングホームで見えてくるシステムのひずみ
(マイケルモア監督に次は、Sicko #2、nursing home versionを作ってほしい。)

「不都合な真実」あれこれ

総合病院で診療していた医師が継続してナーシングホームまで往診にきてくれないこともある。
主治医の往診は月に一度。それ以外は、看護師が電話で医師に報告して、必要時に医師が往診にくる。

医師がオーダーしても、それがすぐに通らないことがある。フィジカルセラピーなど、保険会社に申請して承認されなかったらカバーされない。医師のオーダーが 出て、承認されるのに3日以上もかかる。Medicalではカバーされない薬だと、医師に報告して、カバーされる薬に変更してもらわないといけない。血液 検査やレントゲン写真までも保険会社の承認が必要なことがある。

たとえ、血圧が80/50まで低下して瞳孔が開いているような状態であっても、保険が切れたという理由で、総合病院・大学病院から患者は転送されてきて、その日のうちに亡くなることもある。

スタッフのケアの質は、かなり個人差がある。毎週のように行われる看護助手向けのスタッフ教育がどれだけ効果をあげているのかわかりにくい。

食事内容は、ローコストなので、メニューは1種類しかなくて、選べない。

 

3.ナーシングホームに入る前に考えて決めておいたほうがいいこと

不用品をためこまないこと(部屋に持ち込めるものは少ない)

ど こまで医療を追求したいか、決めておく。Yes, CPR or Do not resuscitate. 病状悪化したときに総合病院/ 大学病院に転送するのか、食事や水分が充分にとれなくなったとき、点滴静脈注射やチュウブ栄養(鼻や胃チュウブから)をするかどうか、感染症のときに抗生 剤を使うかどうか、呼吸困難のとき酸素療法をするかどうか、人口呼吸器を使うかなど。

もし、自分が判断できなくなったとき、誰に判断してもらうかを決めて、法律的な書類をつくっておく。Durable power of attorney

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