「知っておくと、こころの成長に役立つ心理学―エリックソンの心理社会学的学的発達理論

ひまわり会のみなさま。はじめまして。イーストベイで心理カウンセラーをしております足立順子と申します。このたびは心理社会的発達理論についてお話しをしたいと思います。

この普段聞きなれないこの理論はドイツ生まれアメリカ人心理学者エリクソンが提唱したもので、私たちの一生は乳児期から始まり成年期さらに老年期と8つの時期に分類できると考えられています。それぞれの段階には心理的課題がありその時期特有の対人関係(親、友達、恋愛相手など)が課題を達成できるかできないかの重要なカギを握っているというものです。

まず乳児の場合、信じるということが課題となります。もともと乳児は一人では何もできないので泣くことにより世話をしてくれる人(多くの場合、母親)とのコミュニケーションを図ります。空腹時や抱っこをしてほしい時に泣くと母親がそのメッセージを感知し迅速に授乳したり愛おしげに抱き上げてあげることにより人を信用する土台ができるものです。一方、世話をしてくれる人が愛情を持って接しなければ乳児は人または社会は信用できないと学びます。

次の幼児期は初歩的な自己主張が芽生える成長過程となり、この時期の幼児は自分で立って歩けるようになるとともに自立心が盛んになります。2~3歳児がぐちゃぐちゃに自分で物を食べたり、トイレを使いたがる、自分の服を選びたがる姿がよくみられます。親としては後片付けが大変ですし、時間もかかるので助けてあげたくなるものですが、子供の自立心を養うためには少し我慢して見守ってあげることが必要な時期です。

小学校にあがる前の(Preschoolの頃)子供は家族または友達とのやりとりの中から自主性を学びます。幼児期に自立心を養った子供はこの時期に遊びや分かち合いによって自分を主張する積極性を身につけ、将来も人を引っ張っていくリーダー性を発揮します。自主性が育まれない場合は罪悪感や自己疑問を感じることも多くなります。また男の子と女の子の違いはこの頃から目立つようになり、攻撃的に自分の思いを叶えようとする男の子に比べ女の子は自分を魅力的にして人を惹きつけるようになります。

学齢期に入ると学校で知識や技術を学び、今までよりもさらに複雑な集団関係も学校で形成していくようになります。授業内容を理解することまたは宿題やテストで成果が発揮されると、自尊心が得られるようになり、周囲からも認めてもらえるようになりこれがさらなる勤勉へのやる気へとつながります。逆に家庭や学校で励ましや褒めてもらえない子は劣等感を持つようになります。

思春期に入ると自分とは(Identity)誰なのであろうと試行錯誤し始めます。価値観の合う友達グループを模索したり新しいクラブ活動や服装を試してみるのもこの頃です。親から離れて自分探求をする子供の姿に戸惑う親御さんも多いですが、それは子供が社会の一員となりつつある成長の証として考えると理解しやすく、子供も自信を持ってIdentityの形成ができるようになります。

中高校生とのカウンセリングでこの年齢の子供たちが揃って口にするのは自律(Autonomy) や信頼(Trust)です。親の立場で見ると子供は今まで通りの頼りのない子供なのですが、子供はもう身体的には親と引けを取らないほど成長してきてますので一人前だと思っています。ですから子供扱いをせずに自分の意見を聞いて信用して欲しいと強く望みます。身体が成人化するとともに性的な経験をすることもありますが、子供扱いを受ける子ほど親には何も話しをしないようです。

青年期は人間関係、特に親密な恋愛関係が課題となります。この時期に真剣な恋愛相手と巡り合うことにより真の親密な相互関係を持つことができます。思春期に自分のIdentityを見つけ出すことのできた青年はこの時期に価値観・人生観を共にする相手と相互関係を築くことができるとされています。最近の研究でも思春期に自分探求がうまくいかなかった人は20代30代なってから安定したパートナーが見つからず孤独感や虚しさまたは鬱に悩まされる結果となっています。

私たちの成年期は大まかに40歳前から65歳前後を指し、この時期は仕事と家庭に重点が置かれます。またこの時期の課題は生殖性(生産性)で、わかりやすく言いますと次の世代を育てるためにどれだけ関わることができるかということとなります。家庭で子どもを育てること以外にも社会的に業績や貢献をして次世代に継承していくことも含まれます。このように40代から60代半ばになると家庭内外での貢献度が高い場合充実感が生まれてくるものです。一方、現状に疑問のある場合には疎外感に苛まれるというものです。

人生の分岐点もこの時期には多く、子供の成人、体力・視力・気力の変化、責任のある役職に着く、後輩の指導、親の看護、定年、閉経などさまざまなものが例として挙げられます。こういった分岐点のせいか定年後の生活の不安や周りとの孤独感・疎外感のご相談をよくお聞きするのはこの年齢です。

そして老年期に入りますと自分の人生を振り返ってみる時期となります。今までの行いや生活を統合的に評価してよくやったと思える人生であれば満足感さらに人間としての円熟味も達成されるものです。逆に自分の人生は失敗だったと感じると悔いが残り深い失望感を覚えることもあります。

以上エリクソンの心理社会的発達理論を私のカウンセリングの経験と合わせてご紹介いたしました。安心していただいていいのは人は必然的に身体的な全成長過程を通過していくもので、何らかの理由で心理的課題が成功しない場合でも前に進めます。ただ心理的課題をクリアできると次の段階の課題を達成するのに大きく影響されますので理想としてはできるだけ多くの成功を手に入れていきたいものです。

 

足立順子 MS, MFTI

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