「孤舟」 渡辺淳一

この小説は渡辺淳一の小説に多く見られる、男女関係や医学界を題材にした著書と少し異なり、テーマは男とリタイヤメントライフである。寂しくぽつんと湖に浮かぶ一艘の船、それがリタイヤーした後の男の姿と重ねあう。主人公は一流広告代理店を早期退職したエリートサラリーマン。

長く勤めた会社に裏切られ、子会社への出向を断固拒否し、退職の道を選ぶ。さあこれからの自由な時間を夫婦で世界旅行、等などと考えていたのが、次々と厳しい現実にぶつかっていく。交際する友達がいない自分に較べて、ワイフの何と毎日いろいろな社交に忙しいことか。濡れ落ち葉になった自分を相手をしてくれるのは愛犬コタロウだけ・・。平均寿命が延び、退職後の長い長い老後を以下に生きていくかという皆が直面する大きな課題を分かりやすく、切実に、ユーモラスに物語を展開させていく。

私的なことであるが、私自身27年間勤め上げた気持会のソーシャルワーカーの職をこの12月一杯で退くことにした。このひまわり会のニュースレターが皆様のところに届く時はすでに、この主人公と同じ「毎日日曜日」の生活に突入しているかもしれない。高齢者相手のソーシャルワーカーという職業柄、老後を如何に充実させて過ごすかの問題に関してはあくまでも「他人事」としていろいろ関わってきたつもりである。特に男の問題は深刻である。男女の違いが最も顕著に表れるのがこの老後の過ごし方と言っても過言ではないと思う。要するに男は一般的に社交が下手なのだ。「ゴルフ」は神様がこの社交が大の苦手な男達にせめてもの救いとして与えられたものではないかと、いつも思う。さて私自身、この膨大な時間が与えられる「リタイヤメントライフ」を如何に充実したものにできるのか、毎日瞑想に耽る今日この頃である。

春海三悟

 

追記:私このリタイアメントを機会に土屋和子さんより、ひまわり会のニュースレター係の役を引き継ぐことになりました。新しい企画として、自分の知識と経験を生かして、「サンゴの老後相談室」(仮称)のコーナーを設けることを考えています。何かシニア関連のことに関して、相談・質問など、匿名でも構いませんので、お寄せ下さい。